【医師監修】クラミジア感染症と不妊の関係(放置は危険!)
クラミジア感染症は、セックスなどの性行為でうつる性感染症のひとつです。クラミジア感染症は、基本的には薬で治すことができますが、放置しておくと不妊症の原因になってしまうこともあります。
それでは、クラミジアに感染してしまった場合、放置してしまった場合、どのような症状や治療法があり、妊娠や不妊症へはどのような影響があるのでしょうか?性感染症や不妊症の専門医である小堀善友先生(独協医科大学埼玉医療センター准教授)に解説してもらいました。
過去にクラミジアに感染したことのある方、感染して放置してしまっているのではないかと心配な方、妊活中で不妊症を心配されている方は必見です。
この記事の監修医師
小堀 善友先生
獨協医科大学埼玉医療センター リプロダクションセンター副センター長・准教授
日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本性機能学会専門医、日本泌尿器内視鏡学会認定医。
専門分野は男性不妊症・性機能障害・性感染症で、男性不妊症や前立腺肥大症、前立腺癌の治療及び手術に多数携わっているほか、不妊症治療への啓発等にも積極的に取り組んでいる。
クラミジア感染症と不妊の関係【妊娠への影響は?】
クラミジア感染症は感染確率が高く、日本でもっとも患者数の多い性感染症です。性行為によって男女ともに感染する可能性があり、男性不妊・女性不妊を引き起こす原因にもなります。
ここでは、クラミジア感染による不妊リスクや妊娠への影響について、男女別に解説していきます。
男性のクラミジア感染による不妊リスク
男性のクラミジア感染は、男性不妊の原因である無精子症につながる可能性があります。
男性の場合、クラミジアが尿道から感染し、治療せずに放置しておくと精巣上体に感染が広がってしまうことがあります。精巣上体は、精巣でつくられた精子を成長させ、精管へ送り出す働きをしています。
クラミジア感染により精巣上体が炎症を起こすと、精子の通り道である精管が塞がってしまう場合があります。
そうなると、精子を体外に送り出すことができなくなってしまうため、射精した精液の中に精子がいない無精子症になり、男性不妊を引き起こしてしまうのです。
過去にクラミジアに感染したり精巣上体炎にかかったことのある方は、男性不妊のチェックキットなどを利用して乏精子症や無精子症になっていないか確認してみるのも良いでしょう。
女性のクラミジア感染による不妊リスク
女性のクラミジア感染は、放っておくと不妊の原因である着床障害や卵管障害を引き起こす可能性があります。
女性がクラミジアに感染し、クラミジアが子宮や卵管へと広がっていくと、それぞれの場所で炎症を起こします。
妊娠の過程では、受精卵が子宮内膜にもぐりこむ(着床する)必要がありますが、ここに炎症が起こると、着床障害で妊娠しにくくなる可能性があります。
さらにクラミジアが進行し、卵子の通り道である卵管に炎症が起こると、卵管が狭くなったり塞がってしまい、不妊症のリスクを高めます。実際に卵管性不妊症の60%以上が、クラミジア感染によるものという報告がされています。
また、妊婦でのクラミジア感染も約5%みられ、流産や早産の原因になる場合があります。さらに母親からお腹の中の赤ちゃんへ母子感染することもあるため、注意が必要です。
クラミジアの症状【放置は危険!知らぬ間に感染してるかも!?】
クラミジアは放っておくと感染が進行し、男性も女性も不妊のリスクが高まることがわかりました。
それではどのような症状が出た場合に、クラミジアの感染が疑われるのでしょうか?
男性がクラミジア感染した場合の症状
男性がクラミジアに感染して尿道炎になると、排尿時に痛みが出たり尿道から濃が出ることがあります。しかし男性の約半数は自覚症状が出ずに、感染に気づかないままパートナーを感染させてしまうことが多くあります。
クラミジア感染が進行し、精巣上体炎になると陰嚢(いわゆる、たまのふくろ)が腫れて痛みが出て、ほとんどの場合は高熱が出ます。
精巣上体炎にまでなると、男性不妊のリスクがぐんと高まりますので、少しでも違和感を感じた場合は放置せずに病院を受診するようにしてください。
女性がクラミジア感染した場合の症状
女性がクラミジアに感染しても、一般に症状が乏しく90%は自覚症状がありません。そのため、感染に気付かずに、治療をしないまま放置されてしまうことが多くあります。
しかし女性は、一度膣内にクラミジア菌が侵入してしまうと体外へ排出できないため、男性よりも感染率が高いと言われています。
クラミジアが進行してしまうと不妊症のリスクが高まり、妊娠しにくくなってしまう可能性があるため、わずかな症状でも気付いたときは病院で検査を受けるようにしましょう。
クラミジアの検査と治療方法【感染したかもと思ったら】
クラミジアは性行為などにより、誰でも感染する可能性のある病気です。気になる症状が出た場合はもちろんですが、可能であれば定期的に検査を受けることが理想です。
クラミジア感染症の検査
クラミジアをはじめとした性感染症の検査は、性病科や感染症科、また男性は泌尿器科、女性なら婦人科で受けることができます。不妊クリニックなどのブライダルチェックや不妊検査にも、クラミジア感染症の検査が含まれていることが多いため、結婚のタイミングなどで受診するのも良いでしょう。
クラミジア感染症の検査方法は主に2つです。抗原検査では、男性は採尿、女性は膣分泌物を採取し検査をおこないます。抗体検査では、採血による血液検査をおこないます。
結果が出るまでの期間は検査方法や医療機関によって異なり、即日〜1週間ほどでわかります。検査費用は3,000円〜10,000円程度で、医療機関によって異なります。
クラミジア感染症の治療方法
クラミジア感染症は現在、アジスロマイシン(ジスロマック)という薬を用いることにより、多くの場合が1回の内服で治療が可能となっています。
クラミジアに感染していることが分かったら、パートナーも同様に感染している可能性が高いため、同時に検査・治療することをおすすめします。また、クラミジア感染の完治が確認できるまでは、性行為は控えるようにしてください。
感染確率の高いクラミジアですが、薬で治療できることが多いため、放置して不妊症になる前に病院でしっかり検査・治療するようにしましょう。
まとめ 〜不妊リスクをあげないために早めの検査を〜
クラミジア感染症は感染率が高い性感染症です。男性も女性も症状が分かりにくく、放置しておくと感染が進行し、不妊症の原因になる病気につながってしまいます。
クラミジア感染症は、薬を1回内服することで治療できることが多いため、少しでもおかしいと思ったら放っておかずに病院を受診するようにしましょう。結婚のタイミングなどで、カップルでブライダルチェックを受けることもおすすめです。
性感染症で病院を受診するのは恥ずかしいという方もいらっしゃいますが、今はプライベートに配慮している病院も多いため、将来妊娠や出産をのぞむ方は、男性女性問わずまめにクラミジア検査を受けることをおすすめします。
スグケア編集部 2020/01/30