男性不妊の検査|精液検査の方法や費用をチェック
この記事の監修医師
小堀 善友先生
獨協医科大学埼玉医療センター リプロダクションセンター副センター長・准教授
日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本性機能学会専門医、日本泌尿器内視鏡学会認定医。
専門分野は男性不妊症・性機能障害・性感染症で、男性不妊症や前立腺肥大症、前立腺癌の治療及び手術に多数携わっているほか、不妊症治療への啓発等にも積極的に取り組んでいる。
妊活を始める際には、まずは夫婦で不妊検査を受けることをお勧めします。
「不妊症の検査は女性が受けるもの」と思っていませんか?
しかし、不妊の原因の約半数は男性にあると言われています。そのため、不妊検査は、男性・女性両方がそろって受けることが大切なのです。
男性は、まず不妊検査として「精液検査」を受けます。
関連記事 >> 男性不妊の原因|妊娠しない理由の約50%は男性側にあった
そこで気になるのは、精液検査の方法や費用などですよね。また、中には精液検査を受けることに抵抗がある方もいるでしょう。
そこで今回は、男性の不妊検査の方法や費用、精液検査に抵抗がある場合の対策などについて詳しく解説します。
妊活の第一歩は「精液検査」から
男性が最初に受ける不妊検査は、精液検査です。
精液検査では、1回の射精による精液量と精液中に含まれる精子の数や運動量、形などを調べます。
精液検査で精子の状態を調べなければ、どのような不妊治療を受けるべきかどうか、治療によって子供を持てるようになるのかはわかりません。妊活を効率的に進めるためにも、精液検査は欠かせないのです。
それでは、精液検査の内容や問題ないとされる基準値、費用などについてみていきましょう。
精液検査の方法
精液検査では、マスターベーションで採取した精液を、病院から指定された容器に入れて提出します。
病院で採精する場合と、自宅で採精して持ち込む場合の2つのパターンがあります。ただし、採取してから時間が経ってしまうと正しい検査結果を測定できないため、通常は1時間以内に精液を提出する必要があります。そのため、新鮮な精液を採取するためにも、できれば病院で行った方がいいでしょう。
また自宅で採取する場合は、精液を採取する際に、こぼれてしまう場合があります。精液量も重要な因子ですので、こぼさないように注意してください。
多くの病院では、精液採取室というプライベートルームが用意されており、そこで採精します。詳しくは、精液検査を受ける予定の病院に確認してみてください。
精液検査でわかること
精液検査では、主に「精子の数」「精子の運動率」「精子の形」をチェックし、受精能力(妊娠しやすい状態かどうか)を判断します。特に精子の運動率はとても重要で、運動率が高く形が良い精子が妊娠しやすいと考えられています。
具体的に「これ以下であれば不妊症になる」といった明確な基準はありませんが、通常WHOが2010年に発表した正常値の基準を参考に、精液検査の結果を確認していきます。
精液検査の正常値(WHO)
検査項目 |
下限基準値 |
精液量 |
1.5ml以上 |
精子濃度 |
1500万/ml以上 |
総精子数 |
3900万/射精以上 |
前進運動率 |
32%以上 |
総運動率 |
40%以上 |
正常精子形態率(厳密な検査法で) |
4%以上 |
白血球数 |
100万/ml未満 |
上記の基準を下回ると、自然妊娠がしづらいとされています。また、精子の運動率が低い場合は精子無力症、精子の数が少ない場合は乏精子症などと診断されます。
しかし、これはあくまで基準であり、基準値を上回っていても妊娠できないケースもあります。また精子の状態は、その日の体調などによって大きく変動するため、一度の検査に一喜一憂せず、できれば複数回受けることをお勧めします。
精液検査にかかる費用
精液検査は、何を調べるかによって費用が異なります。精子の数や運動率など、精液検査で必ず調べる内容であれば保険適用です。自己負担額は診察費を入れて1,000円程度となっています。自費診療の場合は、医療機関によって費用が異なるため、数千円~数万円かかります。
どの検査項目を調べるかは、病院の方針によって診察時に決めることになりますが、自費診療の精液検査の料金を事前に確認しておいた方がいいでしょう。
精液検査にかかる所要時間
精液検査は、おおよそ1時間で結果が出ます。
ただし無精子症など、精子の数が極端に少ない場合には遠心分離をおこなうため、さらに時間がかかります。また、精子の正常形態率などを調べる場合には時間がかかるため、後日報告となる場合もあります。
クリニックの体制や精液検査の項目によって異なりますので、検査を受ける医療機関に事前に確認しておくと良いでしょう。
精液検査を受ける回数・頻度
精液検査の回数と頻度に決まりはありませんが、精子の状態を正しく把握するためには複数回(2~3回程度)の検査をおこなうことをおすすめします。
精液検査の結果は、その日の体調やコンディションにより10倍近くの変動が起こりうると言われています。つまり、今日と明日の精液検査の数値は変わってくるのです。
特に、精液所見が基準値を下回っていた場合は、月を変えてもう一度測定し直してみると良いでしょう。
精液検査に禁欲期間は必要?
一般的に、2〜7日の禁欲期間を推奨しているクリニックが多いです。
実際、禁欲期間によって精液検査の所見が変わる可能性があります。禁欲期間が短いと精液量や精子濃度が少なくなったり、逆に運動率は高めに出ることもあります。
前項にも記載した通り、精子の状態は日々変化しますので、複数回の検査を行って確かめると良いでしょう。
精液検査以外の一般検査
男性不妊検査では、精液検査の他に次のような一般検査も行われます。それぞれ、何を目的にどのように行うのか確認していきましょう。
・問診
過去の既往歴や、現在の内服薬を調べます。また、勃起や射精などに問題はないか、現在の性生活でトラブルは起きていないかなどを質問します。
・視診
視診は、ペニスや睾丸(タマのこと)など性機能に関する部位を観察します。
・触診
精巣の大きさや精索静脈瘤などを調べるために、手で触って調べます。なお、精索静脈瘤は頻度が高い病気であるため、調べておくことが大切です。
・超音波検査
超音波を用いて精巣や血管の状態などを調べます。静脈が太く、逆流が起きていることが確認できれば精索静脈瘤と診断されます。
・ホルモン検査(血液検査)
ホルモン検査は、血液中に含まれる男性ホルモンや性腺刺激ホルモンを調べます。精液の異常や勃起障害、射精障害などにも関連しているため、医師から勧められた場合は受けるようにしましょう。
精液検査はどこで受ければいい?
妊活にも協力したいし、不妊検査も積極的に受けようと思う・・・しかし産婦人科やレディースクリニックに受診するのはどうしても抵抗がある、そんな男性もいらっしゃるでしょう。
病院で受けるのであれば、産婦人科ではなく泌尿器科がおすすめです。産婦人科は女性の医師が多いですが、泌尿器科は男性の医師が多いため、恥ずかしさが和らぐという方もいます。
厚生労働省の調査(*)によると、精液検査を受けた男性の5割近くが、女性よりも後から検査を受けていることが分かりました。
女性の不妊検査は複数回の通院が必要なのに比べ、男性の検査は1日で終わる場合がほとんどです。将来のイクメンを目指し、ぜひ妊活も男性から積極的に取り組んでいって頂けたらと思います。
*平成27年度厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業「我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究」
自宅でチェックできる、精子検査キットもおすすめ
また、不妊検査を受けようと考えているけれど、精液を採取して提出し、医師と顔を合わせるのが恥ずかしいという方もいるでしょう。
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まとめ ~精液検査は妊活の第一歩!夫婦そろって検査を受けよう~
男性不妊は決して珍しいことではありません。精液検査では、精子の量や質を調べられ、自然妊娠のしやすさが分かるようになります。
不妊検査は妊活の第一歩です。どちらかだけが不妊検査を受けても、もう一方に不妊の原因があるかもしれません。もし、不妊検査で問題が認められても、適切な治療を受けることで将来的に子供を持てる可能性があります。
早い段階で一番効率的な治療を選択できるようにするためにも、夫婦そろって不妊検査を受けることが大切です。
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スグケア編集部 2019/03/13