膣内射精障害|中でイケない人が増加中!?男性不妊の原因にも
この記事の監修医師
小堀 善友先生
獨協医科大学埼玉医療センター リプロダクションセンター副センター長・准教授
日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本性機能学会専門医、日本泌尿器内視鏡学会認定医。
専門分野は男性不妊症・性機能障害・性感染症で、男性不妊症や前立腺肥大症、前立腺癌の治療及び手術に多数携わっているほか、不妊症治療への啓発等にも積極的に取り組んでいる。
不妊症の原因の約半分は、男性側に原因があると言われています。
男性不妊の原因には、精子の質や量、勃起障害など様々な問題が挙げられますが、近年増加傾向にあるのが膣内射精障害です。自然妊娠には、膣内で射精できることが欠かせません。
膣内射精障害では、パートナーである女性が悩んだり苦しんでしまうケースも多くあります。「なんで私で射精できないの?」「もしかしたら自分には魅力がないのでは?」と考えてしまう女性も多いのです。
しかし実際は、女性側に原因があるのではなく、男性の習慣が原因であることが多いんです。そこで今回は、膣内射精障害がどのような状態なのか、何が原因で起こるのかなどを詳しく解説します。
男性不妊外来で増えている射精障害
次のグラフは、国内の男性不妊症外来を受診した患者(1996年:1,504名、2014年:7,253名)の疾患別の内訳を示しています。1996年と比べると、性機能障害の患者の割合が4倍にも増えていることが分かります。
性機能障害とは、勃起障害(ED)と射精障害のことを指します。勃起障害にはバイアグラなどのED治療薬でかなり改善が期待できますが、一方で射精障害で悩む方が近年増加しています。
さらに射精障害の内訳を見ると、その半数以上にあたる53%が膣内射精障害でした(2014年に獨協医科大学埼玉医療センターの男性不妊外来受診者データより)。膣内射精障害とは、マスターベーションでは射精できるのに、セックスの際に膣内で射精できない症状です。
精子の質や量に問題がなくても、射精できなければ自然妊娠は難しく、人工授精などの不妊治療が必要になります。
それではなぜ、膣内射精障害の男性はセックスで射精ができないのでしょうか。
膣内射精障害の原因
膣内射精障害の主な原因は、心理的な問題と不適切なマスターベーションによるものです。
心理的な原因がある場合はカウンセリングが行われます。そして意外にも、膣内射精障害の原因として最も多いのは、思春期の頃からのマスターベーション方法が間違っている場合です。具体的には、次のような方法が、間違ったマスターベーションとなります。
強く握りすぎる
ペニスを握る力が強いと、それだけ刺激も強く感じます。膣内は、強く握ったときほどの圧力がかかりません。次第に、強い刺激を得られなければ快感を得られなくなり、膣内射精障害に繋がるのです。
特定の体位で射精する
マスターベーションで射精する際に脚をピンと伸ばすなど、特定の体位で射精することが習慣づいていると、自然な射精ができなくなることがあります。
プレス法
床や壁にペニスを押しつける方法で、いわゆる「床オナ」と呼ばれるものです。このようなマスターベーションでは、ペニスに強い刺激が及びます。強く握りすぎるのと同じく、プレス法よりも弱い刺激では射精できなくなるのです。
膣内射精障害の治療方法
膣内射精障害の治療は、正しいマスターベーションを身につけることと、セックスに関する不安や悩みごとを解消することがポイントとなります。
正しいマスターベーションを身につける
マスターベーションは、正しく行えば膣内射精障害に繋がる心配はありません。
まずは、正しいマスターベーションの方法を身につけ、適切な刺激で射精できるようにリハビリすることが大切です。マスターベーションでは、次の3つを心がけましょう。
1. 適切な力で握る
みかんを潰さない程度の力を意識してペニスを握りましょう。
2. 適切な速さでピストン
セックスの際と同じ程度の速さでピストンしましょう。ピストンが速すぎると、それに慣れてしまって膣内射精障害に繋がります。
3. 力まない
射精の際に身体に力を入れるクセを直しましょう。リラックスさせるために軽くひざを曲げるなど、工夫することが大切です。
マスターベーションを毎日している方もいますが、間違った方法による膣内射精への影響が非常に大きいと言えるでしょう。
カウンセリングを受けてみる
心因的な原因で射精障害になっている場合は、カウンセリングが必要です。
ストレスやセックスに対するプレッシャー、妊活のためのセックスによる義務感、セックスに関する過去のトラウマなど様々な原因が挙げられます。
パートナーと一緒に専門医のカウンセリングを受け、悩みや不安を解消することで膣内射精障害の改善が期待できます。
薬物療法
勃起障害(ED)と同様、勃起を促すPDE5阻害薬や漢方薬などで、膣内射精障害が改善する可能性があります。医師に相談したうえで、用法・用量を守って服用しましょう。
また、生活習慣病の改善を目的に薬を服用したり、食事や運動を見直したりすることもあります。
まとめ ~ 正しいマスターベーションで射精障害を防ごう ~
射精障害は、本人である男性はもちろん、パートナーの女性も「なんで私では射精できないの?」と考えてしまい、双方に大きなストレスがかかります。また結婚して子供を望むようになれば、不妊の大きな原因とります。
増加傾向にある射精障害の主な原因は、誤ったマスターベーション方法です。強く握りすぎたり、床に押し付けるような習慣がある人は、見直してみてください。正しいマスターベーションの方法を身につけるとともに、精神的な要因を解消するためにカウンセリングを受けるなどして、膣内射精障害を改善させましょう。
スグケア編集部 2019/04/08