不妊と年齢|男女ともに35歳を過ぎると妊娠しづらくなる
この記事の監修
小堀 善友先生
獨協医科大学埼玉医療センター リプロダクションセンター副センター長・准教授
日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本性機能学会専門医、日本泌尿器内視鏡学会認定医。
専門分野は男性不妊症・性機能障害・性感染症で、男性不妊症や前立腺肥大症、前立腺癌の治療及び手術に多数携わっているほか、不妊症治療への啓発等にも積極的に取り組んでいる。
人間の生殖能力は、加齢とともに衰えていきます。
男性・女性ともに、年齢が高くなるほど妊娠が成立しにくくなり、高齢出産には様々なリスクが上がります。特に35歳を過ぎると妊娠率はグッと下がるため、それを念頭に妊活や不妊治療のプランを立てていくことが大切です。
マスコミでは、40歳を過ぎて妊娠・出産をした芸能人のニュース等があふれていますが、実はこれは大変特殊なことなのです。
今回は、不妊と年齢の関係や子供をつくる適齢期について、詳しくご紹介していきます。
年齢が増加すると、卵子も精子も老化していく
妊娠には、卵子と精子が出会って受精する必要があります。受精の確率は、卵子の質や精子の数・運動率などによって変動するのですが、加齢とともに卵子も精子も老化するため妊娠の確率も減っていきます。
下のグラフをご覧ください。女性が自然妊娠する確率(妊孕率)は、30歳を超えると徐々に低下していき、35歳くらいから急激に低下することが分かります。これは年齢とともに、卵子の数が減り、カタチもいびつになるなど卵子の老化が生じるからです。
女性には閉経があるため、年齢が上がるにつれ妊娠しにくくなることは、イメージしやすいでしょう。一方で実は、男性も加齢に伴い、自然妊娠の確率が低くなる傾向があります。
多くの報告では、30〜40歳代を境にして、精液の量、精子濃度、総運動精子数、正常形態精子が減少していくことがわかっています。また、精子に老化のストレスがかかると、精子のDNAの損傷を引き起こすため、不妊のリスクを上昇させます。
妊娠能力に関わる男性ホルモンは、女性の閉経と異なり、急激に低下するわけではなく個人差があります。そのため、60歳でも自然妊娠できるケースもありますが、それはごく稀なケースと言えます。
女性の加齢は、不妊治療の成功率に影響する
下のグラフは、ART治療(体外受精や顕微授精などの高度不妊治療)における妊娠や出産の割合を年齢別に表しています。体外受精などによる妊娠率も、30代から徐々に低下し、35歳を過ぎると更に急激に低下していくことが分かります。
男性の年齢と体外受精や顕微授精の成績との関係については、まだ統一した見解がないのが現状ですが、最近の報告では男性も35歳を過ぎると生殖補助医療(ART)における出産率が下がるというものも見られます。
近年、晩婚化傾向があるため、高齢でも妊娠を望むカップルも増えています。しかし、体外受精などの不妊治療を選択する場合でも、女性の年齢により成功率が大きく変わってきます。
これを踏まえた上で、妊活のタイミングやライフプラン等を、夫婦できちんと話し合うことが大切です。
男女ともに加齢は、流産の確率を上げる
妊活や不妊治療では、妊娠することがゴールになりがちですが、出産に至るまでにも様々なリスクが伴います。
自然流産の頻度は、全妊娠のうち約15%程度といわれています。しかし自然流産の確率もまた、妊婦の年齢とともに増加し、35〜39歳では約25%、40歳以上だと50%以上にも昇ります。
同様に、男性の年齢も自然流産に影響します。45歳以上の男性の場合は、25歳未満の男性よりも自然流産の確率が約2倍になるという報告があったり、また自然流産に与える影響は男性が40歳以上は女性の30歳以上と同じ程度とも言われています。
男性も女性も年齢が上がるにつれ、流産のリスクが高まるということを頭に入れ、妊娠後も心身ともに無理をせず、栄養をきちんと摂るように心がけましょう。
まとめ ~ 年齢に応じた妊活を始めよう ~
男性も女性も年齢が上がるにつれて、自然妊娠の確率や体外受精などの成功率が低くなっていきます。特に35歳以上になると妊娠の確率が急激に下がり、さらに流産の確率も上がってきます。
こうした統計を踏まえ、子供を望むカップルはできるだけ早く妊活や不妊治療を始めると良いでしょう。また、年齢によって自然妊娠できる確率も変わってくるため、妊活や不妊治療の方法も変わってきます。必要に応じて病院を受診し、医師と相談しながら効率的な治療を進めていくことをお勧めします。
人生において重要なイベントである妊娠や出産。自然に身を任せるのではなく、夫婦できちんとライフプランを話し合うことが大切です。
スグケア編集部 2019/02/20